実際に行ったことは無くても、経験の浅いビギナーでも名前は知っているであろう、恐らく日本国内で最も有名なスキー場、長野県の北東部位置する「野沢温泉スキー場」。
ゲレンデ・コースは総面積297haを誇り、トップから最下部までの標高差は1,085m、最長滑走距離は10,000m、最大傾斜は39度!というスペックからは中・上級者向けの難しいスキー場という印象を受けますが、初心者コースが40%もあり、どんなレベルでも楽しめる日本最大級のスキー場。
野沢温泉スキー場を誰もが知る、名が知れ渡る理由は、そんなゲレンデ・スキー場としての規模やスペックだけでは図れません。
スキー場・ゲレンデでスキー・スノボを楽しむことだけでなく、温泉旅情・伝統・雰囲気・名物グルメ・アクティビティなど、様々な魅力が人々を魅了し、昔も今も変わらない人気と知名度を保ち続けています。
1923年に日本国内での初めてのスキー場として発祥した野沢温泉スキー場。当初からスキー場の麓でもある野沢温泉村という小さな温泉街、村が主体、経営母体となって運営されています。
単に賑やか、華やかなスキー場を目指すのではなく、村内に昏々と湧き出る温泉はもちろん、地域の文化や伝統を大切にしながら、村の繁栄と一緒に長い歴史を刻んで来たからこそ、ただスキー・スノボを楽しむだけのスキー場とは趣の異なる、観光旅行としても趣き深い温泉旅情の魅力を併せ持つ、他に類の無い雰囲気が多くの人を引き付けて止みません。
開湯700年以上、江戸時代からの歴史を持つ野沢温泉は、湯に浸るだけでなく、村人は100度近くもある源泉で野菜や卵をゆでたりなど日常生活とも繋がっていて、村人共有の財産として今も「湯仲間」という制度で大切に守り継がれています。
国の天然記念物・野沢温泉の台所「麻釜」 画像©https://lineblog.me/fallindebu/
野沢温泉村の特産品として全国的に有名な野沢菜漬けも、村人によると麻釜の湯で洗った野沢菜でないと本当の味にならないそうで、旅館などでの食事などでも、湯で洗ったり茹でたりした惣菜が並ぶことは少なくありません。
温泉街・村内13ヶ所にある外湯の湯めぐりは野沢温泉のお楽しみ
利用時間は6:00〜23:00(冬季)、基本的には無料で利用することができます。
どの外湯も天然温泉100%かけ流し、決して広くはないものの、いつも清潔に保たれているのは「湯仲間」によって維持管理されているから。たとえ僅かでも構いません、いつまでも楽しみたいこのお湯を使わせていただく、維持管理への感謝の気持ちを、各入口にある賽銭箱へ入れるようにしたいものです。
野沢温泉では近代的な大型建物を見ることはほとんどありません。村内の道路は決して広くなく、縦横につながる路地は車1台が走れる程度。
野沢温泉村の温泉街 画像©https://lineblog.me/fallindebu/
自慢の野沢菜漬け、名産品などが並ぶ商店の店頭 画像©http://mtptr.sblo.jp/
冒頭で触れたとおり、標高1,650mの毛無山山頂から温泉街に向かって広がる標高差1,086m、ゲレンデ・コース数が36もある野沢温泉スキー場ですから、上級者でも1日では滑り切れないほどのゲレンデではありますが、スキー・スノーボード以外の楽しみ方もあります。
2010年には1日に107cmもの雪が積もった記録も残る国内屈指の豪雪地帯でもあり、極上のパウダースノーを楽しめることでも知られています。近年流行のパウダーランを楽しむ目的で、国内はもちろん海外からのスキーヤー・スノーボーダーが数多く訪れます。
野沢温泉スキー場では、この数年は毎年のように、主に外国人によるスキー場エリア外での遭難騒ぎが発生しています。エリア外は進入厳禁、ツリーランを楽しめるエリア・コースはありません。
雪上車に乗車して、誰も足を踏み入れることができない雪深い雪原を行く「雪原遊覧ツアー」を毎日募集、催されています。
大迫力の雪上車に乗車するだけでも貴重な体験
4月7日(土)~5月6日(日)の間は週末・休日他、午前1回・午後1回の開催
雪原を歩くスポーツ・スノーシュー 画像はイメージ©https://sotoasobi.net/
澄み切った空気の中で壮大な自然景観に魅せられたり、モシカやウサギなどの野生動物と出会いも期待しながら、広大な自然をゆっくり散策するスノーシューイング。
野沢温泉スキー場エリア内には、気軽に歩けるコースから、ガイドと一緒に歩くツアーなど、いくつかの常設コース・ツアーが整備されています。
日本最長!全長652m、最大時速約70Km!標高差122mを一気に滑り降りる空中大滑降!
日本最長のジップライン!
大浴場や水着を着用して楽しむ源泉かけ流しの展望露天風呂、大露天風呂、レストランもある大型温泉施設「野沢温泉スパリーナ」。
野沢温泉スパリーナ
スキー場・ゲレンデとしての魅力、外湯めぐりなど温泉旅情も楽しめる、スキー・スノボ以外のアクティビティ。様々な要素のそれぞれが充実している野沢温泉スキー場ですから日帰りで帰るなんてもったいない!村内のお宿に泊まってゆっくりと満喫したいものです。
野沢温泉での宿泊は、中小規模の旅館や民宿、世代交代などによる建替えで多少洋風になったロッジなどが中心です。
近代的なホテルやお洒落なペンションに泊まりたいという方もいるかもしれませんが、村全体の雰囲気からもそんなイメージは無いでしょう。「野沢で泊まるなら旅館・民宿」と決め込んでください。
ゲレンデ直近の宿泊施設は多くはありません。また、狭い路地沿いのお宿も多く、車で訪れる場合は駐車場が無い(村営駐車場他を利用)、荷物を降ろすための横付けすら難しいことも多々あります。
江戸時代から続く温泉地ですから、数百年の歴史をもつ、格式高い老舗旅館も何軒かあります。ただ、高額または割高なこと、リピーターが多すぎて予約がかなり取り辛いことなど、現実的ではないのでここでは紹介しません。
また、野沢温泉村内には近代的なリゾートホテル、超高級な温泉旅館は存在しません。
宿泊についての情報になったとたんにネガティブな記述が続くように感じたかと思います。村という自治体が基盤にある、700年も続く野沢温泉の温泉街なのですから、バブル期でさえ大規模な開発や企業の進出は押さえられてきた歴史があります。
好き嫌い、好みの問題ですが、郷に入らば郷に従え。
温かく出迎えてくれる旅館・民宿・ロッジに泊まって、ほのかに香り漂う情緒溢れる温泉街「野沢温泉」らしい旅をお楽しみください。
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余談ですが、日本の観光地を紹介したフランスのガイド本「ミシェラン・グリーンガイド 日本編」で、野沢温泉は二つ星を獲得しているんですよ。