まだ10月、富士山の山頂ですらまだ雪が積もっていない季節なのに「屋外のスキー場がオープン」と聞いてオドロいている方も多いかも知れませんね。ある程度スキー・スノボの経験がある方なら「ああ、人工雪でしょ…」ってなるんでしょうけれど、どうやって“雪”を造っているのか、作り方で“雪質”は違うのか、なんてことを考えたことはありませんか?
人工的に雪を造る機械・装置のことを平たく言うと「スノーマシン」とか、日本語で単純に「造雪機」と呼びます。
スキー場・ゲレンデを白銀の世界、一面真っ白に覆う雪。何十haもあるスキー場全体を雪で覆いつくすのですから、本来は自然に降った雪です。たくさん雪の積もる地域・場所にしかスキー場が無いのはこのためです(当然)。
でも、相手は“自然”なのですから、年によっては十分に積もらない、気温が高くて積雪が維持できない、期待する時期に量が足りない…ということがあります(当然)。
このスキー場を経営する側の方々にとって致命的な欠点を補う設備が「スノーマシン」「造雪機」というもので、構造・理屈から「人工降雪機」と「人工造雪機」に分類できます。いいずれも1基数千万円~数億円もするのですが、導入数や使用の程度に違いはありますが、概ね40%ほどのスキー場がスノーマシン導入しています(知ってた?)。
古く昭和50年代からある設備・機械が「人工降雪機」です。ゲレンデの脇やリフトの支柱の近辺にある、ポッカリ丸い口のあいた機械、アレです。
圧縮した空気と水を噴射し、人工的に作り出した霧のような細かい水滴を空気中で凍らせ、雪の結晶に近いものを降らせるという原理。基本的に気温が低くないと雪にならず、異常に乾燥している時や強風の時も効力がなくなってしまうのですが、条件が整っていればサラッサラのパウダースノーと見紛うほどの上質な雪(正しくは氷の粒混じり)が出来上がります。出来立ての人工雪は極上の滑り心地なコトも。
最新型、と言ってもかなり古く原理は同じなのですが、冷媒を使って(エアコンのように)冷気を噴出すことで効率を高めたものが現在の主流。ただ、巨大なエアコンですから電力を相当消費してしまうことがネックなのと、自然環境の保護という観点から規制されているフロン・代替フロンというガスが必要なため、高コストな傾向があります(滑る分にはそんなの関係ありませんが)。
ちなみに余談ですが、ヨーロッパではこの原理を高層上空で行うことで「人工的に雨雲を造る、雨を降らせる」ことが実用化されているんだそうです(アニメの世界みたい)。
一方、「人工造雪機」は昭和のバブル期から本格的に運用され始めた機械で、簡単に言うと巨大なかき氷器。ガンガン氷を作り、細かく削って噴射するというもの。気温や気象条件に全然左右されずに雪を造ることができるのですから、全く季節外れでもスキー場をオープンさせることが出来るため、バブル期に競うように本格導入され、競うようにスキー場のオープン時期が早まりました。
近年でも10月~11月初旬にゲレンデをオープンさせるスキー場はこの種の「人工造雪機」を使用しています。かき氷と同様にゲレンデにかき氷の山を点々と積み上げて(溶けないように)おき、平たく慣らせばゲレンデの出来上がり~(上画像:かき氷を積み上げてオープンに備えるイエティ)
雪の降らない気温で威力を発揮する人工造雪機で造られたゲレンデ・雪は少しづつ溶けていますから水分を多く含んでいるのが特徴。また、あくまでも「氷」なので粒は大きく春先のザラメを細かくした(ビギナーには難しいか…)感じと言いましょうか。天然雪とは全く違う滑り心地です(当然)。
基本的には人工降雪機、人工造雪機とも、自然の積雪を補う目的で使われています。天然雪がたっぷりあるに越したことはありませんが、コイツらがあれば「気温は低いが降雪は少ない」場所や、「早くから営業・オープンして知名度UP!」という側面も。
もちろん、人工降雪機、人工造雪機はどちらが良いというものではありません。
画像Calyponte at the English language Wikipedia [GFDL or CC-BY-SA-3.0], via Wikimedia Commons